裁判員制度に見るメディアのあり方。

歴史的な改革と呼ばれ始まった「裁判員制度」。その初判例は、懲役15年(求刑16年)という判決で一旦幕を引いた。

裁判の4日間、マスコミは連日こぞって審理の状況を報道していた。
今回の判例は殺人罪。刑事事件としても相当シビアな判例であることは間違いない。その上、裁判員制度の初判例なのだから、マスコミや世論が注目することは当然だろう。

さて、報道の主はなんだったろうか?

私は、ほぼすべてのメディアの視点が、選出された日本初の裁判員の一挙手一投足に向けられていたことに嫌なものを感じずにはいられなかった。これは裁判なのだ。制度のお披露目会ではないのだ。

犠牲になった人がいる。犠牲になった人の遺族がいる。そして、加害者がいる。

判定が下り、メディアも世論の興味もこの判例から日に日に離れていくのだろう。我々の日常において人を裁くという場は身近ではないから、しようがないことかもしれない。

だが、考えなければいけない。

もし自分が、今回の初判例のような事件の関係者だったとしたら?自分たち自身のことなのに、そこを無視して別なところばかりにフォーカスされていることを、どう感じるだろうか?

人の命が奪われたという事実。裁判員制度は、その事実を検証し正しく裁くための1つの手段に過ぎないことを忘れてはいけない。

明日の Web デザインへのヒント。

ria

明日の Web デザインへのヒント」ということで、RIA コンソーシアム主催のビジネスセミナーに出席してきました。

私の勝手なイメージでは、RIA と Web デザインはあまり直結するモノという意識がないので、RIA コンソーシアムという団体主催の Web デザインネタというものに、単純に興味が沸いた。

全3セッションとパネルディスカッション1つという内容でしたが、中身はこんな感じ。

Gainerを使ったサービスとネットとリアル連動の可能性。 1PAC 阿部さん

お正月に一部で沸いた「Are you HOT!」というワンパクさんのセルフプロモーション的なコンテンツについてのおはなし。

ネットとリアルを連動させたコンテンツということで、所謂「福引き(ガラガラのアレ)」を Gainer を使って、且つ Web でユーザに体験してもらったら素敵だね。というコンテンツです。

ネットとリアルを連動させるということをテーマにコンテンツ作りをすることに、次のようなメリット・デメリットがあると仰っていました。

■メリット

  • クリエイティブの幅が広がる
    コミュニケーションデザインを考えた場合、画面とリアルの連動性の証明(見せ方)の工夫が大事。
  • 消費されにくいモノが作れる
    カラダを使ったコンテンツは記憶に残り易い。

■デメリット

  • 運用の仕方
    ソフトウェアのデバッギングだけでなく、特にハードウェアに対する運用スタイルがキモ。
  • 時間とお金

確かに、実際にクライアントワークとしてプロモーションコンテンツをフィジカルネタで作りあげる場合は、運用を誰がどう対応していくかというのが非常に大きな問題になるのかなと思います。

ただ、メリットに挙げられているように、カラダを使った体験によって与えられるインパクトの強さは、目だけで得られるそれを遥かに凌ぐものだと思うので、仕事になるとおもしろそうですね。

ARを使ったBOWカードとWebにおけるARの可能性。 BOW 吉川さん

BOW さんの名刺に住んでいる AR アバターのおはなし。

BOW cARd は AR を使ったコンテンツということで、技術的な側面はもちろんとても面白いのですが、吉川さんが仰っていた今後の展望というか、クリエイションに対する姿勢がとても素敵でした。

「生活が素敵になっていくものを作りたい。AR はその手段の1つ。」と。
先日読んだ「なぜデザインなのか。」でも原さんが書かれていましたが、デザインというものは生活を豊かにするためのものであるべきだということ。モノを作る以上、いつもその意識は中心に置いておかないといけませんね。

リアルと連動したコミュニケーションとデザインのこれから。 セミトラ 菅井さん & 田中さん

akarium と color tokyo 2つのプロジェクトについてのおはなし。

言わずと知れた両プロジェクトですが、セミトラさんのクリエイティブワークには次のようなポイントがあるようです。

  • シンボルになり得るものをつくる
    「なり得るもの」と書くとちょっとニュアンスが違うかもしれませんが、そのコンテンツのインタラクションがその場のシンボルになることを意識して作っているようでした。
  • ユーザに解釈を委ねる
    使い方を懇切丁寧に示すのではなく、アソビというか揺れ幅の余地をある程度残すことで、自然発生的に Buzz が起きることを期待する。

ポイントの2つ目については確かに仰るとおりで、ユーザビリティだとかアクセシビリティが狂ったように重要視されていましたが、ユーザの経験に頼ることで新しい使われ方や展開が生まれることの期待値も、絶対に忘れてはいけないことですね。

これからの Web。明日のデザインとは?(パネルディスカッション)

パネラーとして、ビーコン・コミュニケーションズ渡辺さんトリプルセブン・インタラクティブ福田さんが加わり、Web コンテンツ制作のいまについて語ってくれました。

興味深かったのは、旧来のマスメディアとインターネット、各々の領域で生きてきたクリエイターのボーダーがなくなっていくんじゃないか?もしくは、ボーダレスになることでもっと面白いものが出てくるんじゃないか?というもの。

確かにいままでは、CM や映画を作ってた人たちが Web に流れてくるというパターンは良く目にするけど、その逆というのは中村勇吾さん(UNIQLO、iida)とかほんの一握りだと思う。これからは、そういう逆輸入みたいなものづくりにも期待大です。願わくば、私もそういう一線で戦って行きたいと思います。

スピーカーの皆さま、お疲れさまでした。

Twitter でつぶやきマーケティング。

twitter

先日のヒウィッヒヒー の件しかり、今や日本でも Twitter は着実にそのユーザの幅を広げつつある。
そんな中、Twitter のバイラル効果を期待したマーケティング戦略を模索する企業もまた増えているようだ。ユーザ数が増えれば、それだけマーケットが拡大するのだから、当然の流れと言えよう。

調べてみると、Twitter の使われ方にいくつかのケースが見られた。

アウトレット商品のバーゲン情報配信 米デル

これにより、300万ドルもの売り上げを達成したとある。ただし、Twitter 経由での売り上げなのか、Twitter でつぶやき始めてからの総売げなのかは不明だ。

アウトレット商品や限定商品など、個体数に限りがあるアイテムを一種のタイムセールとして販売することは、購買層への刺激にもなる。
また、タイムセールに必要なリアルタイムな告知についても、メールや RSS、ウェブサイト上での告知よりも、Twitter でのつぶやきを拾った方が、何となくリアルを感じる。「いまから○○が安いよ」だとか「今日はイキのいい××が入ってるよ」のような、耳に懐かしいコトバを目にすることで、ネット上に販売相手を感じることができるのだ。

また同様のケースとして、ニューオーリンズのピザ屋では、15% の売り上げ増を達成したそうだ。
この店舗では、Twitter ID を看板に書き、フォロワーの増加に積極的だったということも成功要因の1つだろう。これも 15% 増という結果が Twitter 経由のみかなのかは不明だが、ピザ屋という町の特定のエリアを商業対象とする店舗の売り上げを延ばしたという点は評価できると思われる。

カスタマーサポート窓口 StarbucksWells Fargo

やはり即時性が求められるものこそ、Twitter の本領だろう。
カスタマーサポートを Twitter 上で行うメリットは幾つか考えられる。

  • ブランディング力の向上
  • ユーザの生の声の収集
  • トラブル発生前でのユーザへのサポート
  • 企業側からのユーザへの問いかけ

従来のカスタマーサポートというのは、ユーザーが疑問や苦情を企業側に投げかけ、企業側がそれに答えるというものだ。問いに対して解があるため、電話や手紙(メール含め)が使われてきた。これは、1対1であり、「ユーザー→企業」の一方通行のサポートに見える。

これに対し、Twitter 上のカスタマーサポートでできる最大のメリットは、上記4つ目の企業からのユーザへの問いかけだと思う。Twitter 上であれば、フォロワーの数だけ「多対1」の状況ができ、さらに、「企業→ユーザー」への問いかけも出来る。

例えば、掃除機であれば、「畳を掃除する際はどういう設定で掃除してる?」だとか。そうすることで、1つの問いかけがお互いに非常に有用なコミュニケーションとなり、ディスカッションに発展することを期待できる。

窓口となるサポートデスクの負荷は今まで以上に大きくなることは確かだが、享受できるメリットもまた大きいのではないだろうか。

広告媒体から見た世界と日本。

少し前に広告コンテンツ制作の相談を頂いた際に、数ある広告媒体の内、ネット広告はどのぐらいの母数があって、どのぐらいの影響力を持ってるのだろうと気になることがあった。調べてみると、若干当初の主旨からはズレてしまったが、日本と世界を比較した現状を分かり易くまとめているブログエントリがあったので、備忘録としてメモしておこう。

 via: インターネット広告費の比率,日本は欧米より低い

これによると、欧州諸国に比べ、アメリカ・日本における総広告費に対するネット広告費の占める割合は高くないというのが現状のようだ。上記ブログエントリにも記載されているとおり、日本のネットインフラは他国と比較しても PC、モバイルともに十分な環境が整っているはず。

それにもかかわらず、このグラフが示すところは何だろうか?

Spark project 勉強会 #11 に行ってきたよ。

Spark project の勉強会に行ってきました。

Adobe からも Steven Sacks 氏が来日中ということで、GAIA Framework についてのお話を聞けました。途中(というか最初から…?)、Sacks 氏の MacBookAir がプロジェクタにつながらないらしく、Adobe Connect でプレゼンをするという不思議な光景に。同一会場なのに(笑) Adobe Connect は、前職で拠点間ミーティングに使っていたので、ちょっと懐かしかったです。

さて、各プレゼンはこんなところ。

AS3 の Zip ライブラリを拡張したよ。 – 伊藤さん -

AS3 で zip ファイルの圧縮/解凍ライブラリである nochump を、かゆいところに手が届くように拡張しましたよ、というお話。
主な拡張ターゲットは、次の3つ。

  • 圧縮時のフォルダ構成の再構築
    3つのクラス ZipEntry、ZipFile、ZipOutput をゴニョゴニョしてました。
  • マルチバイト文字列を含むフォルダへの対応
    AS 側で勝手に UTF-8 変換してしまうので、OS の文字コードに強制変換する。
  • 複数の Zip ファイルから 1つの Zip ファイルの再圧縮への対応
    一旦各 Zip を解凍すると処理時間がかかりすぎるので、圧縮データ部のみを抜いて、ラップの Zip ファイルを構成する。驚異的な改善!

多量ファイルの通信が発生する時など、Zip ファイルの圧縮/解凍を組み込むことは時々あるので、nochump についてのこういった拡張情報を得られたのはありがたいです。いつか Spark にもコミットしてくれるとのことでした。

FLARToolkit を使ったお絵描きビューワー。 – 山田さん -

FLARToolkit を使って、恐竜の皮膚の色を塗って見てみようというもの。科学博物館などで、お子さま向けコンテンツとして人気のようです。目新しさというものはありませんが、ビューワーも恐竜のモデルも、年齢を問わず触りやすそうな UI でした。AR の案件というのも今後増えてくるのかなと思いますが、技術面だけでなく的確な UI を練ることも重要ですね。AS ネタの視点とズレていてすみません…。
また、Adobe での AR 熱もかなり盛り上がっているらしく、次回 MAX でも AR ネタのセッションが幾つか予定されているとこのとでした。

GAIA Framework 使ってよ。 – Steven Sacks さん -

海外では “Soup and Bread” と呼ばれるほど、そのお手軽さが高い評価を得て、ユーザが絶賛増加中らしい GAIA Framework についてのご紹介でした。GAIA Framework は簡単に言ってしまうと、Progression のようなもの。“スクリプトを書けないデザイナも、ギークなデベロッパも、GAIA を使えば簡単に SWF コンテンツが作れちゃうよ” というのが基本コンセプトでしょうか。

たしかに、短いデモの時間でもその手軽さは十分に伝わりましたが、ここまで Progression が浸透してしまった日本での普及は難しいのではないかというのが率直な感想でした。ただ、AS2 でもいける という点は良いですね。

Progression 4 の開発進捗報告。 – 阿部さん -

“Soup and Bread” に対して、”ごはんとみそ汁” なフレームワーク Progression ですが、今秋にはもうバージョン 4 のパブリックベータがアップ予定とのことでした。

気になる新機能として、次の3点が紹介されました。

  • シーン階層の自動調整
    シーンを外部ファイル化した場合に子のシーン(swf)だけを再生すると、シーン階層の相対パスが崩れてしまうので正常に動かないはずですが、この相対パス部を自動的に調整してくれるそうです。
  • アプリケーションのコンフィグ
    コンテンツの特性に応じて、BasicAppConfig、WebConfig、LWAppConfig(=LightWeight) などを指定することで、諸々最適化されるそうです。特に、LWAppConfig だとベースの swf サイズがなんと半分!ブログパーツの作成には有効ですね。
  • キャストコンポーネントのオートラベリング
    キャストオブジェクトをステージに配置した際に、コンポーネントに必要なラベルを自動的に配置してくれるというもの。コンポーネントプロジェクトをする人には朗報です。

あと1時間ぐらい余裕があったら、もうちょっとおもしろいお話が聞けそうでした。特に GAIA とか Progression とか。スピーカの皆さん、お疲れさまでした。