デザインの輪郭。

深澤直人さんの「デザインの輪郭」を読みました。
深澤さんが「ひとりごとのようなもの」と記されているように、深澤さんの当時のデザイン観がゆったりと語られた内容です。

深澤さんといえば、±0 が思い浮かぶ人が多いのではないかと思います。私自身も、±0、au の Infobar などプロダクトデザイナーとしてのお名前しか知りませんでした。本書を拝読して、深澤さんのデザインの姿勢が、所謂ふつうの生活に根付いたものであるという印象を持ちました。

印象的だった内容を抜粋しておきます。

Without thought。

僕がこれを考えたように見えるといわれますが、それは僕が考えたわけではなくて、そうなるべき姿であったということの結果だと思います。

“傘立てのデザインの1つの解としてのタイルの溝” を挙げて、これを「行為に溶けるデザイン」とも述べられています。そして、デザインを先行して思案者の勝手な理屈やストーリーを展開するのではなく、行為に内包されている事象と記憶の中からデザインのきっかけを見い出すことの重要性を説いています。

確かに、後付けされた理屈は、初見のインパクトやその場しのぎには効果はありますが、デザインを長く捉えた時の色褪せ方というか魅力に欠けるものだと、妙に納得してしまいました。まぁ、後付けする理屈のクオリティにも依りますが…。

気付きのズレ、遅れの妙味

最初に見たときに、そのかたちの意味がよくわからないというのがいいと思う。なにかあたりまえなことをしていて、それが立ち現れてきたときに、「あれ?」・・・「!」となるのがいい。 – (中略) – この気付きのズレ、遅れがいいと思っている。このわずかな気付きのタイムラグは、作者が見いだした意識の中心を辿って到達するまでの時間のズレであり、作者の思いに受け手が追いつく時間のズレである。

これは、先日読んだ「なぜデザインなのか」の中で原さんが仰っているように、「”わかった” の先にある何かを芽生えさせる」ことに近く、私のやりたい・やらねばならない意識の持ち方だと思いました。

コメントをどうぞ